それはまさに恐怖に彩られた表情でありました。
それは、数年前に体験したほんのささいな日常の出来事の一つにすぎないのです。
私にはよくパチンコ屋で会う方がおりました。それほど親しくはないのですが、たまに一緒に食事したりもしていた方です。
その方は、私が買っている金額とは比較にならないほどの勝ち金額を稼いでいました。比較にならないというのは、数倍から数十倍というレベルで、月間でいうなら最低100万以上という金額ではなかったかと記憶しています。
このような金額は、個人で稼ぐには尋常な金額ではありません。そうです・・・・彼は違法行為によって稼いでいたのです。
そのやり方は、スロットのいわゆる体感機を使って特定のタイミングでボタンを押して、強制的にボーナスや連荘のフラグを成立させるという方法です。
私はそっちの「ウラ」の世界にはまったく通じていませんでしたし(もちろん今も!)まったく興味はありません。しかし、その当時はやはりうらやましい、という気持ちは持ちました。
ある時、偶然にしてその方の「仕事中」の現場に立ち会うことになりました。私も「仲間」だと思われると、やっかいなことに巻き込まれる怖さがあったので、離れてべつの機種を打っておりました。
すると彼が近くに来てなにごとか会話をしてまた戻っていきました。
ふと気付くと、私のすぐ横に傘が落ちておりました。私は彼が置き忘れたのだろう、と思ってその傘を手にとりました、親切心で彼に渡そうと思ったのです。
そして、打っている彼に気付かせようと、トントン、っと肩を叩いた時・・
彼はまさに恐怖に満ちた表情でふり返ったのです。
おそらく私が店員で、なにかの不正に気が付いて問いただそうと近づいたのだと思ったのでしょう。そして彼の脳裏には、彼に起こるかもしれないあらゆる恐怖の可能性についての想像が頭を駆け巡ったに違いないのです。
その恐怖の表情が今でも時々思い出されます。
不正はその行為そのものではなく、その行為によって生み出される自らの恐怖や罪悪感によってこそ自らを苦しめることになるのだと思います。その表情を見たときに、彼を少しでも羨ましいと思った気持ちはどこかへ吹っ飛んでいきました。
最近は、パチンコ屋での犯罪への対応も厳しくなって、法律的にも窃盗罪を適用するケースが増えてきたと聞いています。窃盗罪を適用されると、びっくりするぐらい重い懲罰が課せられることもあるようです。
ウラの道には身を染めないほうが幸せかもしれませんね・・。彼は今でもあの頃と同じように、いつ訪れるか分からない恐怖と共にあるのでしょうか。
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